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可視化と構造化が組織を強くする ――「誰かの頭の中」に依存しない介護組織をどうつくるか

「この人たちは、“現場を回す人”ではなく、“組織を勝たせる人”だ」
取材が始まって間もなく、そう感じさせる独特の緊張感があった。言葉は穏やかだが、話題は一貫して数字と構造に向けられていた。「なぜそう判断するのか」「次に何を打つのか」が、すべて言語化されている。
「誰かが優秀だから回っている組織」から、「誰がいなくても回り続け、成果を出し続ける組織」へ。
その実現のために、何を可視化し、どこまで構造化するのか。SVとして現場と本部をつなぐ濱林さんと、教育・人材育成を担う箭内さんに話を伺いました。

目次

■頭の中にある「知識」と「思考」を組織の資産に変える

ーまずお二人の役割として、「可視化」と「構造化」をどう定義し、現場へどのような価値を提供しようとされているのか、その入り口からお聞かせください。

 

濱林:本部やSVという立場になると、どうしても現場より多くの情報を持つことになります。 それは介護技術だけでなく、法律、制度、売上構造、数字の読み方も含めてです。私は、それらを誰でも辿れる形にすることが「可視化」だと考えています。

 

管理者が判断に迷ったとき、現場が壁にぶつかったとき、「そういえば、あの資料にあったな」「あの考え方があったな」と立ち戻れる。迷わずに意思決定できる“地図”を用意すること。それが、私の役割です。

 

箭内: 濱林さんが組織の状態を可視化しているのに対し、私は、人の思考の質を可視化している感覚ですね。組織の中で起きている判断や工夫の多くは、実は言語化されないまま現場で消費されています。誰が見ても同じように使える状態にするために、意図と使い道を与える。そして組織の共通言語として定着させることが、可視化と構造化のための私の仕事ですね。

 

濱林:管理者・現場・本部をつなぐ縦のライン、報告・連絡・相談、そして予算管理。これらを“人に依存しない仕組み”として一体化させる。今まさに、そこを本気で作り込んでいます。

■KPIは「打ち込むだけの作業」ではなく、逆算して勝つための「武器」

ーKPI管理も、その構造化の一部なのでしょうか。

 

濱林: KPI自体は数値を算出して見える状態にしているものですが、それだけでは足りません。大事なのは、その数値を使って管理者がどう判断し、現場に落として営業に繋げていくか。

 

介護業界全体を見ても、管理者が数字を「入力する人」になってしまい、判断に使いきれていないケースは少なくありません。KPIは、「予算との差」や「上振れ・下振れの要因」、そして「どこがキーになる数字か」を読み解くためのものです。

 

たとえば、契約者数が多くても欠席率が高ければ売上は伸びない。逆に、契約者が少なくても利用頻度が高ければ売上は作れる。どの数字を動かせば結果が変わるのかそれを理解しているかどうかが、管理者としての力量です。

 

箭内:数字は、判断に使われて初めて「構造」になりますからね。

 

濱林: 本当に考えられる管理者は、数字から逆算ができます。「今月は目標までいくら足りないから、残り3週間の中でイベントを計画し、今まで15%だった欠席率を8%まで下げて数字を埋めよう」といった具体的な一手を打てる。手法だけではなく、数字から判断できる「構造」を現場に持たせたい。KPIがあるのに現場が変わらないとしたら、それは数字の問題ではなく、使い方の問題です。

■「なんとなく」の運営が招く、属人化という最大のリスク

ー可視化や構造化が不足している組織では、何が起こるのでしょうか。

 

濱林: 一言で言えば、すべてが「なんとなく」になります。なんとなく営業に行き、なんとなく利用者様が来ている。根拠がないから「なぜ営業に行かなきゃいけないのか」「なぜこの数字に着目すべきなのか」という問いに答えられない。質問しても回答が出てこない状態では、営利法人として何をもって事業を運営しているのか分からなくなってしまいます。

 

私たちは早い段階から数字や根拠を重視してきた分、極端な属人化は起きにくい組織だと思いますが、やはり整理されていないと「サービスとは何か」という根底すら揺らいでしまいます。

 

箭内:「なんとなく」が生まれる一番の原因は、判断の基準が共有されていないことです。人によって考え方が違い、その違いが整理されないまま日々の運営が進んでしまいますよね。

 

私が担っている教育の面で言えば、完全に属人化が起きますね。仕事ができる人の頭の中が可視化されていないと、その人がいれば回るけど、いなくなったら何も残らない。企業の目的や方向性も同じです。知っている人だけが走り、その人が抜けた瞬間に組織がバラバラになる。だからこそ、思考を可視化し、共有できる構造に向かっていかないと、同じことが繰り返されて、組織として繋がっていきません。

 

■Dr.ZNOOが目指す、失敗すらも財産に変える「思考の型」の継承

ー属人化を防ぎ、再現性のある組織にするために、どのような仕組みを運用されているのでしょうか。

 

箭内:人材の入れ替わりや拠点拡大が進む中で、個人の経験だけに頼る運営には限界があります。

 

そうした背景から生まれたのが、ナレッジ共有プラットホームの「Dr.ZNOO」です。成功事例を背景・課題・方法・成果・分析という“思考の流れ”として可視化しています。大事なのは、「これをやればうまくいく」という正解集にしないこと。A事業所でうまくいったことが、B事業所でも通用するとは限らない。だからこそ、考え方を学んでほしい。

 

濱林: やり方ではなく、思考が大事ですからね。

 

箭内: そうなんです。私たちは「真似して失敗した」で終わる組織にしたくない。失敗とはやり方の誤りではなく、思考が止まった瞬間だと考えています。なぜその判断に至ったのか、どの情報をどう解釈し、どこで前提を誤ったのか、読み切れなかった変数は何か。そこまで分解して初めて次の一手が生まれる。

 

だからDr.ZNOOで共有するのは成功例ではなく、成功や失敗に至るまでの「思考の軌跡」です。情報を構造で捉え、仮説・検証・修正を回すリテラシーと、失敗からでも解を生み出し続ける解決志向のコンピテンシーを育てる。それが、私の目指す教育です。

 

濱林:人事考課でも自己評価と管理者評価のギャップを数値化し、管理者に「なぜその評価なのか」の根拠を言語化してもらいます。そうすることで誰が管理者になっても教育ができる。誰が休んでも組織が回る。それが現場を支える「構造」になります。結果として判断スピードが上がり、数字も安定していきます。

■リーダーが不在でも自走する、強い組織の完成を目指して

ー二人の取り組む「可視化・構造化」の先に、どのような組織を描いていますか。

 

濱林:極端な話、もし自分たちが急にいなくなっても、会社が止まらずに現場が最高のパフォーマンスを発揮し続けることです。誰が欠けても、同じ基準で判断し、同じ質でサービスを提供し続けられる組織が一番強い。

 

私たちの部署にしても、私がいなくなったからといって会社が止まるわけではない。各々がやるべきことを把握して自律して動いている。そうした精度の高い組織を横展開していくのが、私たちの仕事です。

 

箭内: 私も同じです。属人化せず、組織として自走する状態を作るために、今の知見や経験を可視化する。それを使って現場の人たちが自分たちで思考を深められるように構造化を働きかける。優秀な人の仕事を組織全体の力に変える。それができれば成果は必ずついてきます。

 

濱林: もちろん、一朝一夕で実現できるものではありません。ただ、「何を基準に考えるか」が揃っていることは不可欠です。だからこそ、私たちがやるべきことはそこを目指せる「レール」を敷くこと。それが私たちの考える「可視化・構造化」の着地点です。

 

濱林さんが示す「数字から逆算して一手を打つ」力と、箭内さんがDr.ZNOOを通じて伝えようとする「学び思考する」力。これらが掛け合わさることで、組織はリーダー一人のカリスマ性に依存することなく、自走を始めます。

お二人に共通しているのは、「優秀な人を増やす」ことではなく、「誰か一人がいなくなっても、現場が困らない状態をつくりたい」という視点でした。

「自分が不在でも、現場が最高のパフォーマンスを発揮し続けるために、今何を遺せるか」お二人の言葉は、組織の未来を創るための重要な指針となるはずです。

 

株式会社3eee 業態推進部 部長 濱林 宏貴
株式会社3eee
〒060-0004 北海道札幌市中央区北4条西6丁目1-3
TEL/011-210-8088
FAX/011-210-8089
株式会社3eee 業態推進部 人材開発担当 箭内 雅志
株式会社3eee
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この記事は2026年1月16日に作成されました