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「福祉は産業ではなく、人生デザインだ」数字の向こうにある、私たちが守るべき“時間”

「介護はルーティンワークではない」。 日々の業務に追われ、効率や安全性が優先されがちな昨今の福祉現場。しかし、現場と経営の最前線に立つ二人は、現状のケアのあり方に静かな危機感を抱いていました。

私たちは何のためにサービスを提供し、何のために経営を行うのか。目の前の「作業」の先にある、福祉の本来あるべき姿――「人生デザイン」という考え方について、専務の田中恒司さんとSV橋本佳弘さんが本音で語り合いました。

目次

【「改善」だけが正解ではない。本当の成果とは】

インタビュアー: 今の介護報酬制度では『状態の改善』が評価される仕組みが増えていますが、現場で日々利用者様と向き合う中で、その評価基準に違和感を抱くことはありませんか?

 

田中: 制度上求められる「成果」と、現場が感じる「成果」には、やはりズレがあると言わざるを得ません。制度は機能向上やADL(日常生活動作)の改善といった、目に見える「数字」を求めます。もちろんそれは重要な指標ですが、それだけが福祉の目的ではありません。

 

橋本: それは現場にいるとより強く感じます。数字上の改善だけが全てではないんです。たとえ身体機能が現状維持、あるいは低下していく状態であっても、その人自身が「今の生活でいい」「この場所で過ごせてよかった」と心から納得できているなら、それは立派な成果なんじゃないかと。

 

田中: その通りです。短期的な機能改善を目指すことも大切ですが、私たちが本当に寄り添うべきは、その先の長期的な「納得感」です。それこそが福祉の真の成果だと思っています。

 

橋本: はい。数字の改善には表れなくても、「ここにいるから、今の生活ができているよ」と言っていただけること。そこにこそ、私たちの仕事の本質がある気がします。

 

田中: もちろん制度の指標は重要ですが、評価の軸が「数値化しやすい改善」ばかりに偏ると、現場が窮屈さを感じる場面もあります。人の幸せや生活の質は、必ずしも点数の上がり下がりだけで測れるものではありません。そこを取り違えると、ケアの方向性が歪んでしまう懸念があります。

 

橋本: はい。状態を良くしようとするあまり、ご本人のペースや意向を置き去りにしてしまっては本末転倒ですよね。私たちが向き合っているのは「数字」ではなく「人」です。制度の基準を満たすことばかりに囚われず、その人らしい時間をどう守るかという視点を、絶対にブレさせてはいけないと感じます。

【「諦め」ではなく「選択」に寄り添うプロ意識】

インタビュアー: リハビリや介護の現場では『目標達成』が重視されますが、身体的な限界などで本人の願いが叶わない現実に直面したとき、専門職としてどのような振る舞いが求められるとお考えですか?

 

田中: 現場で一番難しいのが、その「できないこと」への向き合い方ですよね。どうしても周囲は「なんとかできるようにする」ことばかりを求めてしまいがちです。

 

橋本: そうなんです。例えば、「もう一度富士山に登りたい」という願いがあったとして、身体的・医学的にどうしても無理な場合もある。その現実に直面したとき、現場がどう関わるかが問われます。単に「無理です」と諦めさせるのではなく、現実と折り合いをつけながら、新しい優先順位を一緒に見つけていくプロセスが重要だと思います。

 

田中: 人生って、できることが増えていくだけの右肩上がりではありませんからね。年齢とともに「やらない」「できない」という選択を受け入れ、折り合いをつけていくことも往々にしてある。私たちは「できる可能性」を無責任に押し付けるのではなく、その人の「選択」に最後まで伴走する存在でありたい。

 

橋本: その折り合いをつけるプロセスにどう寄り添えるか、そこが専門職の真の価値ですよね。「富士山には登れないけれど、代わりにこれができるようになれば、今の生活がもっと豊かになるね」という新しいゴールを共有すること。それがまさに、残りの「人生のデザイン」なんだと思います。

 

田中: ただ、それを現場のスタッフ全員ができるようになるには、人材育成の視点も大きく変えていかなければならない。「あれをやれ、これをやれ」という業務の正解や手順を教えるだけでは、伴走できる人材は育ちません。

 

橋本: はい。今まさに社内で取り組んでいる研究プロジェクトなどもそうですが、職員一人ひとりが「その人の人生全体をどう捉えるか」という視点を持てるような教育が必要です。管理職の役割は、単に業務を管理することではなく、スタッフの「視点」そのものを育てることだと痛感しています。

【経営とは「利益」ではなく「責任」である】

インタビュアー: 事業所として生き残っていくためには『稼働率』や『収益』といった数字も無視できません。それらを追うことが、巡り巡って利用者様の利益にどう還元されるとお考えでしょうか?

 

田中: こうやって「人生デザイン」という本質的な視点を持つと、経営というものの意味合いも全く違って見えてくると思います。

 

橋本: 全く変わりますね。利益を出すこと自体が目的ではなく、その人の限られた時間に関わり続けるための「持続性」を担保することが、経営の目的になります。

 

田中: その通りです。事業が続けられなければ、その人の人生に伴走し続ける約束を果たせない。だからこそ、経営は目的ではなく、果たさなければならない「責任」なんです。

 

橋本: 利益や稼働率を真剣に考えるのは、自社の懐を潤すためではなく、目の前にいる利用者様の「明日からの生活」を守るためなんですよね。

 

田中: 在宅で長く、その人らしくあるための生活。それを支える私たちのサービスが本当に良いものであれば、結果として地域から選ばれ、利益につながり、それをまたスタッフや次のより良いサービスへと還元できる。この健全な循環を作り出し、維持することが、私たちの最大の使命です。

【私たちは、サービス提供者ではない】

インタビュアー: 最後に、改めてご自身たちの仕事を一言で定義するとしたら何でしょうか?

 

橋本: そうですね。これまでお話ししてきたように、私たちは単に「介護サービスを提供している」わけではない、ということです。

 

田中: はい。私たちは、その人のこれからの時間を、その人自身と一緒に設計している。つまり、「福祉とは、人生デザインである」。結局のところ、これに尽きますね。

 

橋本: 本当にその通りだと思います。これからも現場と経営がこの強い想いを共有し、一人ひとりの人生に深く、そして責任を持って関わっていきたいです。

【編集後記】

「経営」と「現場」。一見すると対立しがちな両者の視点だが、田中専務と橋本SVの対話からは、その根底にある想いが完全に一致していることが伺えた。二人にとって数字や効率は、あくまで利用者様への責任を果たすための「手段」に過ぎない。

 

目指しているのは、産業としてのスケールではなく、関わる人すべての「納得できる人生」のデザインなのだ。この温かくも強靭な信念こそが、同社のサービスを根底で支える屋台骨となっている。

株式会社3eee 専務取締役 田中 恒司
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株式会社3eee 業態推進部 橋本 佳弘
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この記事は2026年2月27日に作成されました