北海道の交通インフラを守るために。 ― 株式会社3eeeがインドネシアでつくる「ドライバーを育て、地域につなぐ」仕組み ―

株式会社3eeeでは、この課題に対して、インドネシアの行政、交通事業者、企業、教育機関と連携し、日本で活躍するドライバーを現地から育成する仕組みづくりを進めています。
網走バスでの外国人ドライバー受け入れから始まり、PT Hino Motors Sales Indonesiaとの運転技能育成、スマランの公共交通との連携、そして今回の中部ジャワ州政府との協議へ。
なぜ、介護・福祉をはじめ幅広い事業を展開する株式会社3eeeが、北海道の交通インフラという課題に取り組むのか。
代表取締役・田中紀雄氏に聞きました。
目次
- なぜ株式会社3eeeが「交通インフラ」の問題に取り組んでいるのでしょうか
- 自動運転やドローン配送などの技術も進んでいますが
- その最初のモデルが網走バスとの取り組みですね
- そこから「海外事前育成型」に発展したのですね
- スマランでも新たな動きが始まっていますが?
- そして今回、中部ジャワ州政府との協議へ発展しましたね
- 最終的には、どのような仕組みを目指しているのでしょうか
- 北海道にとって、どんな未来につなげたいですか
- 【編集後記】
なぜ株式会社3eeeが「交通インフラ」の問題に取り組んでいるのでしょうか
これは交通会社だけの問題ではないと思っているからです。北海道では、バスの減便や路線縮小がすでに進んでいます。私たちの地方の事業所でも、バスの減便によって、公共交通機関を利用して通勤するとサービス提供の時間に間に合わない、といった問題が実際に起き始めています。
交通が維持できなくなると、通勤や通学だけの問題ではありません。医療、介護、観光、そして物流にも影響していきます。普段、当たり前のようにスーパーやコンビニに商品が届いていますが、それも人が運んでいる。
ドライバー不足がさらに進めば、生活そのものに影響が及ぶ可能性があります。交通を守ることは、地域の暮らしを守ることだと思っています。
自動運転やドローン配送などの技術も進んでいますが
もちろん、そこには大きな期待をしています。ただ、北海道はとにかく広い。札幌のような都市部と、地方では交通事情もまったく違います。自動運転やドローン配送だけで北海道全域の交通や物流を支えられるようになるには、まだ時間が必要だと思っています。
未来の技術を待っている間にも、路線は減り、人材は不足していきます。だから私たちは、「今できることをやる」ことが重要だと考えています。
その一つが、海外の優秀な人材をきちんと育成し、北海道の交通を支える人材として活躍してもらう仕組みです。
その最初のモデルが網走バスとの取り組みですね
はい。
株式会社3eeeでは2025年、特定技能制度を活用した外国人バス運転手の受け入れ支援を開始し、第1期として網走バス株式会社への紹介・採用支援を行いました。
そこでインドネシアから来日したのが、ウィル・ストロングさんです。
来日すればすぐにバスを運転できるわけではありません。日本語、交通ルール、安全確認、大型二種免許、接遇、そして実際の路線での訓練。一つひとつ積み重ねながら、地域交通を担うドライバーになるための準備を進めてきました。
ウィルさんの挑戦はNHKやNHK WORLD-JAPAN、HBCなどでも取り上げられました。
HBCでは、実際の教習の様子や職場でのコミュニケーション、家族をインドネシアに残して北海道で挑戦する姿まで密着して紹介されています。この経験から感じたのは、単純に「外国人を採用すれば解決する」という話ではないということです。
採用する前から、どう育てるか。そこをもっと強くしなければならないと考えるようになりました。
そこから「海外事前育成型」に発展したのですね
そうです。
来日してからすべてを学ぶのではなく、インドネシアにいる段階から日本語や運転技能、日本の安全基準について学んでもらう。そのために、網走バス、インドネシア現地の教育機関、PT Hino Motors Sales Indonesia(HMSI)との連携による「海外事前育成型ドライバーモデル」を進めています。
実車を使った運転技能訓練、試験場での技能評価、安全運行教育、危険予知、エコドライブ、日本の道路交通法、接遇、さらに北海道を想定した積雪寒冷地運転の理論教育などを組み合わせたモデルです。
網走バスとの取り組みでは、年間5名、5年間で累計25名の育成を計画しています。
つまり「人材確保」から、さらに一歩進んで「人材育成」へ。そこが重要だと考えています。
スマランでも新たな動きが始まっていますが?
スマランでは、すでに公共交通のドライバーとして働いている人たちがいます。
Trans Semarangなど現地の交通関係者とも協議を重ね、そうした方々にとって「日本で働く」ということが、新しいキャリアの選択肢になる仕組みをつくろうとしています。
現地でドライバーとして経験を積む。日本語を学ぶ。日本の交通ルールや安全文化を学ぶ。そして、その先に北海道で働くという道がある。単なる求人ではなく、ドライバーとしてのキャリアパスそのものをつくるという考え方です。
そして今回、中部ジャワ州政府との協議へ発展しましたね
これは非常に大きな一歩だったと思います。
今回、中部ジャワ州のAhmad Luthfi知事をはじめ、州政府の関係者と、日本で活躍する人材をどのように育成していくかについて意見交換しました。
州政府からは、職業教育の段階から日本語教育を取り入れることや、技術、安全、エコドライブ、法規、乗客へのサービスまで含めたドライバー教育について、株式会社3eeeと協議していく考えが示されています。
これまで企業同士で進めてきた取り組みに、行政や教育機関が加わってくる。これは非常に大きいです。人材の募集だけではなく、発掘から教育、技能育成、就労、その後のキャリアまでを一つにつなげられる可能性が出てきました。
最終的には、どのような仕組みを目指しているのでしょうか
一つの会社だけではできない仕組みです。
【中部ジャワ州政府による人材発掘・教育】
【THREE INDONESIA GROUPを中心とした日本語教育】
【PT Hino Motors Sales Indonesia(HMSI)との連携による運転技能育成】
【スマランの公共交通事業者での実務経験・キャリア形成】
【株式会社3eeeによる日本での就労・生活・キャリア支援】
【網走バスをはじめとする北海道の交通事業者】
これらを一本につなげたいと考えています。
海外へ行って、人を採用して、日本へ連れてくる。それだけの仕組みにはしたくありません。インドネシアで日本語や技能を学び、ドライバーとして成長し、その先に日本で働くというキャリアがある。日本では、北海道の地域交通を支えながら、さらに経験や技術を身につける。
そして将来インドネシアへ戻った時には、日本で学んだ安全運転やサービス、交通に関する知識を母国に還元することもできる。
「インドネシアから日本へ人を送る仕組み」ではなく、日本とインドネシアの間で人材と技術が循環する仕組みにしたい。
それが私たちの目指している形です。
北海道にとって、どんな未来につなげたいですか
人口減少や人手不足は、これからさらに進んでいくと思います。その中で地域の生活をどう守っていくのか。介護も、医療も、物流も、観光も、交通がなければ成り立ちません。外国人材は単なる「人手不足を埋める人」ではありません。
一緒に地域を支える仲間として、日本で働くことが本人のキャリアにもなる。そういう関係をつくらなければ、持続可能ではないと思っています。北海道の交通インフラを守るために、私たちにできることを一つずつ形にしていく。そして北海道から、全国にも展開できるモデルにしていきたいと思っています。
【編集後記】
介護や福祉を幅広い事業展開の軸とする株式会社3eeeが、なぜ異分野である交通インフラの課題に挑むのか。田中代表の「交通を守ることは、地域の暮らしを守ること」という言葉に、そのすべての答えが詰まっていました。
お話を伺う中で最も印象的だったのは、外国人材を単なる「不足を補う労働力」としてではなく、「共に地域を支える仲間」として迎え入れようとする、温かくも本質的な視点です。日本に連れてきて終わりではなく、インドネシアでの事前育成から始まり、現地でのキャリア形成、そして将来的な母国への技術還元までを見据えた「循環」のエコシステムは、非常に壮大かつ画期的な取り組みです。
自動運転などの未来の技術を待つのではなく、「今できること」に全力で向き合い、国境を越えて行政や企業を巻き込んでいくその行動力に、北海道、ひいては日本の地方が抱える課題解決への力強い希望を感じました。
海を越えて生まれたこの「人を育て、地域につなぐ」仕組みが、北の大地の未来をどのように照らしていくのか。今後のさらなる展開に期待が高まります。

2025年|網走バスで第1期プロジェクト始動
株式会社3eeeが、特定技能外国人バス運転手の紹介・受け入れ支援を開始。網走バス株式会社への第1期導入を発表しました。
2025〜2026年|ウィル・ストロングさんの挑戦
インドネシアから来日したウィルさんが、日本語、大型二種免許、安全運転、接遇、路上訓練などを重ね、北海道の地域交通を支えるドライバーへ。NHK、NHK WORLD-JAPAN、HBCなど各メディアでもその挑戦が紹介されました。HBCでは教習からデビューを目指す姿が密着取材されています。
2026年|PT Hino Motors Sales Indonesiaとの連携
来日後ではなく、インドネシアにいる段階からドライバーを育成する「海外事前育成型」へ発展。運転技能、安全教育、日本基準への対応などを組み込んだ育成モデルを構築し、5年間で25名の育成を計画しています。
2026年|スマランの公共交通との連携
現地でドライバーとして働く人材に、日本で働くという新しいキャリアパスを提示。実務経験、日本語教育、技能育成、日本での就労をつなぐ取り組みへ。
2026年9月|中部ジャワ州政府との協議
中部ジャワ州政府との協議へと発展。職業教育、日本語教育、ドライバー技能、安全、エコドライブ、法規、乗客サービスなどを含む人材育成について、行政を含めた仕組みづくりが始まりました。