個人の尊厳か、時代遅れの常識か。 ルールなき時代の「当たり前」を創るリーダーの 覚悟

今回お届けするのは、株式会社3eee 代表取締役社長 田中紀雄氏へのインタビューです。
『なんとなく印象が悪いから』で個性を奪うのは、思考停止の『バカの大量生産』に加担する行為だ。
田中社長から放たれたこの言葉は、単なる社内ルールの話にとどまりません。日本の組織に蔓延する悪しき同調圧力を真っ向から斬り捨て、一人ひとりの「尊厳」を守り抜くという、強烈な覚悟の宣言でした。
自由とは、決して単なる甘えや放任ではありません。利用者様の安全を守るという、プロとしての重い「責任」を果たすからこそ手に入るものです。表面的な多様性を謳うだけの企業が多い中、ここまで本質を突き詰めた圧倒的な熱量に、思わず胸が熱くなります。あなたが今縛られているそのルールは、本当に「必要なルール」でしょうか? 常識を覆す、インタビュー本編をぜひご覧ください。
目次
- 個人の尊厳と「当たり前」の権利
- 自由に伴う、プロフェッショナルとしての「責任」
- 「バカの大量生産」からの脱却と明確な基準
- 「スーツにネクタイ」は、本当にマナーなのか
- 自由と責任が共存する、私たちの目指す組織
- 編集後記:思考停止を破壊する「真の自由」に出会って
個人の尊厳と「当たり前」の権利
Q:御社では、従業員の髪色や髪型についてかなり自由な方針を打ち出しています。外見や個人の多様性について、どのような信念をお持ちなのでしょうか?
A:はっきり申し上げておきます。私たちは、髪の色や長さ、服装といった表面的な外見だけで人を判断するようなことは絶対にしません。性別、年齢、国籍、民族、宗教、障害、性的指向、性自認、価値観、文化、そして個人の表現。どのような違いがあったとしても、それを理由に偏見や差別を受けるなどということは、決してあってはならないのです。私たちは、あらゆる偏見や差別に対して断固として反対します。
誰かの個性や生き方を、会社や周囲の狭い「普通」という枠に押し込めるために一律に制限するようなことは、私たちのやり方ではありません。だからこそ、業務上本当に必要な場合を除いて、髪色や髪の長さを制限するルールは設けません。髪色は基本的に自由。長さも自由です。ただし、視界を妨げたりサービス提供の邪魔になる場合は、結ぶ、留めるといった適切な対応をお願いしています。
勘違いしないでいただきたい。これは、個性を認めるための「特別な配慮」などではありません。誰もが自分らしく働く権利を持っているという、ごく「当たり前の考え方」に基づいているに過ぎないのです。
自由に伴う、プロフェッショナルとしての「責任」
Q:個人の自由を強く尊重する一方で、ネイルや髭、ピアスなどについては一定の制限を設けているのはなぜですか?
A:なぜなら、自由には常に「責任」が伴うからです。私たちはプロフェッショナルです。利用者様への安全なサービス提供、衛生管理、そしてサービス品質に影響を与える身だしなみについては、当然のこととして必要な範囲で制限を設けます。
具体的に言いましょう。ネイルは、その長さや形状、装飾が利用者様に接触して怪我をさせる恐れがある場合、または衛生管理上の懸念がある場合は、認めません。髭についても同様です。サービス提供時の衛生面に懸念が生じるため、原則として認めません。ピアスは、引っかかりや脱落、接触によって利用者様や従業員に危険が及ぶ恐れのあるものは認めません。ただし、勤務中に外すことで安全が確保できるのであれば、勤務中のみ外して対応してください。
自由を守るためには、他者の安全を守る責任を果たすことが不可欠なのです。
「バカの大量生産」からの脱却と明確な基準
Q:身だしなみの判断基準は、現場の雰囲気や管理者によって曖昧になりがちです。どのような基準でルールを運用していくのでしょうか?
A:非常に重要なポイントです。ユニクロの柳井社長が、日本の画一的な教育や横並びの思考停止を指して「バカの大量生産」と痛烈に批判した言葉をご存知でしょうか? 私はこの言葉に強く共感します。
「昔からそうだから」「一般的ではないから」「なんとなく印象が悪いから」。
このような、中身のない思考停止の理由だけで個人の髪型や外見を制限することは、まさに自ら考えない「バカの大量生産」に加担する愚かな行為です。私は絶対に認めません。身だしなみに関する判断を、個人の好みや一律の偏見で行うことはしません。私たちの判断基準は、極めて明確です。
- 利用者様および従業員の安全が確保されていること
- サービス提供に支障がないこと
- 衛生管理上の問題がないこと
- 利用者様や関係者に不快感・不安を与えるおそれがないこと
- 法令、契約、事業所の運営基準に適合していること
各事業所は、この基本方針を踏まえた上で運用基準を定めることができます。しかし、その基準が個人の属性や表現の自由を不当に縛るものであってはならない。あくまで「安全、衛生、サービス品質の確保に必要な範囲」に限定すべきなのです。
「スーツにネクタイ」は、本当にマナーなのか
Q:髪型や身だしなみだけでなく、いわゆる「仕事着」についても、昔からの常識に疑問を持たれているそうですね。
A:そうですね。例えば、スーツにネクタイという格好があります。世の中では、それを「社会人としてのマナー」「仕事をするなら当たり前」と言う人がいますが、私はそこにも少し違和感があります。
もちろん、TPOは大切です。相手や場所、目的に合わせた服装を考えることは必要だと思います。ただ、それ以上に大切なのは、その人自身のライフスタイルや、その仕事にとって本当に適切な服装なのかということではないでしょうか。
そもそも日本で現在のような西洋式のスーツが広く取り入れられるようになったのは、明治以降のことです。それほど長い歴史を持つものではありません。それが、いつの間にか「これが社会人の常識だ」「これ以外は失礼だ」とまで言われるようになっている。私は、そこに少しおかしさを感じます。
特にネクタイなんて、極端に言えば機能上必要なものではありません。防寒具でもなければ、安全のためのものでもない。基本的には装飾、つまりファッションの一つだと思っています。だから、ネクタイを締めたい人が締めるのはもちろん自由です。スーツが好きで、3ピースを格好良く着こなす。それも立派な自己表現であり、ライフスタイルです。ただ、それを「常識」に変えてしまい、他人にまで強制することには違和感があります。むしろ、立派な3ピースのスーツを着て、ネクタイを締めて、全身を完璧に決めていることで、相手によっては威圧感を感じる場合だってあります。実は私自身、それを経験しています。
以前、私が事業所の見学対応をする際、当然のようにスーツを着て対応していました。ところが、あるとき利用者様が明らかに緊張されていることがありました。話を聞いていくと、スーツ姿の人間が目の前にいることで、少なからず威圧感や緊張感を感じていたのです。それを知って、私はスーツで見学対応することをやめました。私たちの仕事は、スーツを着て「きちんとしているように見せること」ではありません。利用者様に安心していただくこと、話しやすいと感じてもらうこと、その人にとって居心地の良い環境をつくることです。
だとすれば、「社会人だからスーツ」という常識よりも、「目の前の相手にとって何が一番良いのか」を考える方が、よほど本質的ではないでしょうか。
私は、スーツそのものを否定しているわけではありません。スーツを着ることも自由ですし、それを自分のスタイルとして楽しむことも素晴らしい。ただし、それはあくまで一つの選択肢です。_
一つの時代、一つの文化の中で生まれたスタイルを「絶対的な常識」にして、それを理由に他人を評価したり、組織が一律に強制したりする。そういう考え方には、私は疑問を持っています。大切なのは、「昔からそうだから」ではありません。なぜ、その服装が必要なのか。誰のためのルールなのか。そのルールによって、誰が安心し、誰が不自由になるのか。そこまで考えた上で決めることです。服装も髪型も同じです。常識に人を合わせるのではなく、人と仕事の目的に合わせて常識そのものを問い直す。私は、そういう組織でありたいと思っています。
自由と責任が共存する、私たちの目指す組織
Q:最後に、この方針を通じて、どのような組織、あるいは社会を実現したいとお考えですか?
A:私たちは、誰かを外見だけで決めつけるような社会にはっきりと「ノー」を突きつけます。一人ひとりの違いを尊重し、その人らしさを堂々と認め合える、そんな力強い組織を目指しています。自由な表現を尊重することと、プロとして安全・衛生・サービス品質を守ることは、絶対に両立できます。
従業員の皆さんには、自分らしく働く権利を大いに謳歌していただきたい。しかし同時に、専門職として安全と品質を確保する重い責任を負っていることも忘れないでください。もし判断に迷うことがあれば、一人で抱え込まず管理者や責任者に確認してください。私たちは、偏見や差別を決して見過ごしません。誰かの個性を否定するのではなく、必要な安全基準を明確にし、その範囲を超えて人を不当に縛らない。それこそが、私たちの信じる真の「自由と責任」なのです。
編集後記:思考停止を破壊する「真の自由」に出会って
「常識だから」「昔からそうだから」。そんな曖昧な理由で個性を奪うことを、「思考停止」だと一刀両断する田中社長の姿勢に、私自身の無意識の偏見も見事に打ち砕かれました。
田中社長が語る「自由」は決して甘えではありません。利用者様の安全や衛生というプロとしての「重い責任」を果たすからこそ、個人の尊厳を最大限に守り抜けるのです。
時代遅れの慣習を打破し、新しい「当たり前」を創る。この圧倒的な「自由と責任」の宣言に触れ、明日職場に向かう皆さんの景色が、少しでも新しく変わることを願ってやみません。

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