テクノロジーで“人を活かす”――DX経営が描く、3eeeの新しい働き方と価値創造

しかし「DX=システム導入」では、本当の意味での生産性向上や働きやすさは実現できません。
株式会社3eeeでは、経営と現場の両側から課題を見つめ、テクノロジーを“人を活かすための戦略”として位置づけています。
今回は、本社でバックオフィス改革を牽引する専務取締役田中恒司さんと人材開発部門の箭内雅志さんが、DXとAIの活用によって何が変わり、どんな価値を生み出してきたのかを語り合いました。
目次
- 現場DXで見えた「業務の可視化」と「人の力の最大化」
- ナレッジ共有で「現場の知恵」を全社の力に
- バックオフィスDXで生み出す「攻めの時間」
- AIが変える日常業務 ― “考える時間”を取り戻す
- DXの本質は「人が輝く環境をつくること」
- まとめ ― 技術と人が融合する「価値を生む現場」へ
現場DXで見えた「業務の可視化」と「人の力の最大化」
近年、介護・福祉業界でもDX(デジタルトランスフォーメーション)が急速に進んでいます。御社では、現場業務の効率化や働き方の改善にDXをどのように取り入れているのでしょうか?
田中:DX導入で最も大きかったのは、“業務の可視化”です。これまで感覚的に行われていた作業量や負担の偏りを、データとして把握できるようになりました。誰がどの業務をどれだけ担っているかをリアルタイムで見える化できたことで、過剰な残業や特定職員への負担集中を防ぐことができましたね。
箭内:確かに、以前は“忙しい人に業務が集まる”状況があったと思います。今ではシステム上で進捗や負担が共有できるので、チーム全体で支え合えるようになりました。業務フローの標準化も進み、効率的な手順が共有されたことで、現場職員がより価値の高い業務に集中できるようになったのを実感しています。
田中:経営的に見ると、これは単なる効率化ではなく、“人材の力を最大化する投資”なんです。仕組みでムダをなくすことで、人がより創造的な仕事に時間を使えるようになりました。
ナレッジ共有で「現場の知恵」を全社の力に
DXによって、現場の知見を組織全体で共有する仕組みも変わってきたのではないでしょうか?
箭内:現場の取り組みを全社に共有できるようになったのも大きな変化ですよね。
田中:拠点ごとの属人的な取り組みを解消し、同じ課題に対して毎回ゼロから試行錯誤する状況を改善するため、ナレッジ共有プラットフォーム『DigitalBrain』(社内名称:Dr.ZNOO)を導入しました。これにより、研修動画や手順書だけでなく、成功した改善策のBefore/Afterデータ、具体的な実施手順、使用ツール、必要時間、成果を測定するKPI、さらにはリスクと回避方法、現場での運用ポイントを動画で可視化したものまで、再現性を担保する情報を体系的に蓄積しています。この仕組みによって、ある拠点で成果を上げた改善策を別の拠点が即日レベルで実装できるようになり、組織全体の学習速度が飛躍的に向上しました。
箭内:導入後の変化は明確で、改善プロセスのリードタイムは40〜60%短縮し、各拠点が同じ失敗を繰り返すことが減少したため、トライ&エラーの回数そのものが大幅に減りました。さらに、手順の標準化によってミス発生率が下がり、教育や指導にかかっていた時間も年間数百時間規模で削減されています。移動研修が不要になったことで人件費の圧縮にもつながり、研修・改善活動における総コストを効果的に抑えることができています。今では現場スタッフから当たり前のようにDr.ZNOOで研修を受講し、事例を共有し、この仕組みが組織文化として定着しつつあり、全社的な業務改善の推進力となっています。
バックオフィスDXで生み出す「攻めの時間」
バックオフィス側でもDXを進めていると伺いました。その狙いを教えてください。
田中:バックオフィスでは、BPOやクラウドシステムを導入し、総務・会計といった事務処理の効率化を検討しています。目的は単なるコスト削減ではなく、“現場を支えるための攻めの時間を生み出すこと”です。承認フローや残業管理のデジタル化で、アラート機能により過剰残業を防止。経営判断に必要なデータもリアルタイムで得られるようになり、現場への支援スピードも向上する可能性を秘めています。
箭内:本社が中心となってデータ管理を一元化することで、現場は煩雑な情報整理や報告業務から解放され、本来の利用者様支援に安心して専念できるようになります。バックオフィスと現場がデジタルでシームレスにつながる体制が整えば、情報の齟齬や判断のばらつきが減り、各拠点が同じ基準・同じスピードで業務を進められるようになります。結果として、組織全体の意思決定が迅速化し、改善活動や加算取得の抜け漏れも防止され、現場負担の軽減と経営効率の向上を同時に実現できると考えています。
AIが変える日常業務 ― “考える時間”を取り戻す
AIの導入も進んでいると聞きます。具体的にはどのように活用されていますか?
箭内:Google Meet の自動メモ機能(Gemini)や ChatGPT をはじめとした生成AIを活用することで、会議録や記録作成の自動化が進み、これまで1〜2時間かかっていた業務がわずか数分で完了するようになりました。その結果、職員の残業時間は大幅に削減され、事務作業に追われていた時間を利用者様支援や改善活動に充てられるようになっています。さらに、AIは新人教育のサポートや文書作成の下書き生成にも活用でき、現場職員が“考えるべきところに集中できる環境”を取り戻すことに大きく貢献しています。こうしたAIの導入は、単なる効率化にとどまらず、現場の質と生産性を同時に高める基盤になりつつあります。
田中:RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用し、パソコン上の定型業務を自動化することで、業務の質を落とさずに効率を向上させる仕組みを整えています。これは単なる作業時間の短縮ではなく、現場職員の知的生産性を高め、本来“考えるべき業務”に集中できる環境をつくる取り組みです。私たちは「AIが仕事を奪う」のではなく、「AIが人の力を引き出す」という考え方を根底に置いており、テクノロジーと人の能力を補完し合う形で業務改善を進めています。
DXの本質は「人が輝く環境をつくること」
最後に、今後のDX推進におけるビジョンをお聞かせください。
田中:DXやAIは決して“目的”ではなく、あくまで業務改善や組織強化の“手段”です。最終的な目的は、職員が働きやすく、力を最大限に発揮できる環境を整えることにあります。効率化によって生まれた時間を、現場が本当に価値のある仕事に集中するために活用できるようにする――それこそが、経営者としての使命であると考えています。
箭内:外注やシステム導入も、単なるコスト削減の手段ではなく、“人の可能性を広げるための戦略”です。テクノロジーを適切に活用することで、現場がより豊かに、かつ誇りを持って働ける環境を整えることができると実感しています。これにより、職員一人ひとりが能力を最大限に発揮し、利用者様に提供する価値をさらに高められる組織づくりが進んでいます。
まとめ ― 技術と人が融合する「価値を生む現場」へ
今回の対談で浮かび上がったのは、DXやAIの導入が単なる業務デジタル化ではなく、経営と現場が一体となって価値を生み出すための戦略的投資であるということ。
『Dr.ZNOO』によるナレッジ共有で、人件費・時間コストを削減。チャットワークで情報共有をスピード化し、判断力を強化。AI・RPAでルーティン業務を効率化し、価値創造に集中
これらの取り組みは、現場職員の成長と働きやすさを高めると同時に、企業全体の生産性と収益力を底上げしています。「技術を活かし、人を活かす。」それが、3eeeが描くDX経営の未来です。